一般社団法人日本体育学会

学会について

会長挨拶

 本年6月8日に日本体育学会定時社員総会が開催されました.そこで大きな変化がありましたので,ご報告いたします.まず,日本体育学会の名称が,「日本体育・スポーツ・健康学会」に改正されることが承認されました.それに伴い定款第3条の(目的)が,以下のように変更になりました.しかしながら,定款第4条の(事業)に関しては,改正案が否決され,学会時の臨時社員総会で再度審議されると思います.

【現行】
第3条 この法人は,体育学に関する学理及びその応用についての研究発表,知識の交換,会員相互及び内外の関連学会との連携協力等を行うことにより,体育学の進歩普及を図り,もってわが国の学術の発展に寄与することを目的とする

【改正後】
第3条 この法人は,体育・スポーツ・健康に関する学理及びその応用についての研究発表及び専門領域間の連携協力による研究成果の統合化を行うことにより,体育学/スポーツ・健康科学の進歩普及を図るとともに,体育・スポーツ・健康にかかわる諸活動を通じた個人の幸福と公平かつ公正な共生社会の実現に寄与することを目的とする.

 上記の改正は,2000年の英文名称の改正 (Japan Society of Physical Education, Health and Sport Sciences)に対応したものとも言えますが,わが国における近年の「体育」から「スポーツ」への用語の転換も背景にあります.また,科研費の審査区分「中区分59:スポーツ科学,体育,健康科学およびその関連分野」と整合性を取ったものともいえます.さらに,注目すべきは「専門領域間の連携協力による研究成果の統合化」を,学会の目的の中に含めたことです.これは,学会大会のあり方とも連動しており,来年度の学会大会からは,「重要な実践的(社会的)課題に関するテーマをいくつか選定し,それらのテーマ別のシンポジウムとテーマ別の研究発表を学会大会の中心に据える」ことが提案されました.この提案は,昨年度から開催されてきた本学会の組織・事業改革特別委員会での議論を基にしているものであります.この特別委員会には,本専門領域からも委員を出し,さまざまな意見・提案を行ってきました.今後学会大会では,専門領域のみのシンポジウムや研究発表はなくなる方向に進み,関連学会,すなわち我々の場合には日本スポーツ心理学会でということになるかもしれません.本学会でも,各専門領域の学術研究の推進は不可欠であると考えられ,そのためには研究発表やキーノートレクチャーなどは存続すべきであると意見を述べてきました.さらに,「個人の幸福と公平かつ公正な共生社会の実現に寄与する」ために,社会へのアピールが必要だと学会本部は考えていますので,日本スポーツ心理学会が行っているような市民向けの公開講座の開催も提案してきてました.今後の動向から目を離せない状況となっています.
 
 このような本学会の状況を鑑みますと,体育心理学やスポーツ心理学の領域を発展させていくために,スポーツ心理学会との協力関係は必要で,両学会でのシンポジウムの包括的検討や,「日本体育・スポーツ・健康学会」でのテーマ別シンポジウムや発表に貢献できるよう,近接領域との今まで以上の協力関係が必要であると思われます.体育,スポーツ,健康といったより広い対象の中で,心理学的方法論から接近することの意義を考えて,研究をさらに推し進めていく必要があると思われます.今後とも,会員相互のより一層の研鑽をお願いする次第であります.

体育心理学専門領域会長
山本裕二(名古屋大学)